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ボルドーでワインを造ってわかったこと

ボルドーでワインを造ってわかったこと

安蔵光弘

出版社:
イカロス出版
判型:
A4判
ページ数:
374ページ
発売日:
2018/09/04 

印刷した本を購入希望の方はこちら!




著者・安蔵光弘はシャトー・メルシャンのチーフワインメーカー。
言わずと知れた日本ワインの最前線に立つ気鋭の醸造家で、 浅井昭吾氏(ペンネーム・麻井宇介)から直接指導を受けた最後の世代である。

2001年から憧れのワイン産地であるボルドーに赴任することになった著者を、 浅井昭吾氏は「ボルドーの生活にどっぷり浸かって、何でも吸収しようという姿勢で臨んでください」 と送り出した。

その言葉を胸に、著者はボルドーのシャトー・レイソンで4年2ヵ月にわたって栽培・醸造の経験を重ね、 ボルドーにおけるワインづくりのすべてを貪欲に吸収し、 ボルドー大学で科学に裏付けられたワイン教育を受け、 ボルドーが世界のワインの聖地となるまでの歴史を研究し、ワイン産地ならではの食生活を体験した。

渡仏する前、著者は「漠然と『ボルドーは天候に恵まれているから、よいワインができるのだろう』と思っていた。
しかし、ボルドーはフランスでは湿度が高い方で、必ずしもブドウ栽培に最適な土地とはいえなかった。
「秋になると比較的多く雨が降るので、収穫まぎわにベト病や灰色カビ病が発生しやすく、 熟したブドウを得るために、ある程度のリスクを覚悟して辛抱強く待たなければならない年も多い」という。

そのボルドーが、なぜワイン産地としての名声と競争力を確立できたのか?
それは、ボルドーという産地が「したたかな戦略」を持ち続け、 造り手が情熱を持って工夫と努力を重ね、技術革新の歩みを止めることがないからだ。

「栽培編」「醸造編」「改植編」「歴史編」「テイスティング編」「生活編」で構成される本書では、 ありのままのボルドーのワインづくりと、ワインに対する考え方が、わかりやすく書かれている。

技術者の視点で語られるボルドーワインの来し方は、新鮮でリアリティがあり、 本書を読めばボルドーワインの見方や楽しみ方が大きく変わるに違いない。

また、副題に「日本ワインの戦略のために」とあるように、 著者は〈日本ワインに応用できる部分は何か?〉という前提でボルドーで知見を広めてきており、 日本ワインの造り手が刺激を受ける要素がふんだんに入っている。
苦難を乗り越えてボルドーが歩んできたサクセスストーリーの底辺に流れているのは、 著者の日本ワインに対する熱い思いである。
日本ワインを担う造り手必見の書でもある。

(本書は2007年5月に発行された安蔵光弘著『等身大のボルドーワイン』(醸造産業新聞社)を底本として、 最新情報を加味して大幅に改訂・増補を行い、イカロス出版が再出版したものです)


プロローグ



第一章●栽培編
1 ボルドーのブドウ品種
栽培面積の89%が「赤」ワイン用
主要品種はマルベックとカルムネールだった
複数品種がリスクヘッジと味わいの相乗効果をもたらす



2 冬の作業
カラソナージュ…支柱を土に打ち込む作業
カラソンは結局アカシアに戻った
カベルネ・ソーヴィニヨンの枝は固い
メルロの強い生命力



3 コンタージュと収量制限
開花期の天候は影響が大きい
戦略的なコンタージュ
飛び散る花粉をものともせず
摘房作業で剪定の重要性を実感
低収量と収量制限はおなじではない



4 糖度調査~収穫日の決定
ボルドーの夏は10時過ぎまで明るい
8月下旬、糖度調査を始める
分析センターの大きな役割
「完熟まで待ちたい」vs「雨の前に収穫したい」
ブドウの熟度は太陽からしか得られない



5 ヴィンテージ
天候がワインのスタイルを決める
日本ワインのヴィンテージは肌で感じたもの
産地ごとにミレジムの評価は異なる


第二章●醸造編
1 収穫~発酵前浸漬まで
落ちつかない収穫前夜
手収穫がいつも最良とは限らない
選果台の役割は大きい
一年の苦労が報われる瞬間
果汁の温度を下げる
発酵前に「醸し」を行う



2 ルモンタージュと圧搾
赤ワイン醸造の決め手はルモンタージュ
ルモンタージュの効果はタンク容量や発酵の度合いで異なる
引き抜きは重力を利用する
カス出し作業はみんな大好き
圧搾ではカスをやさしく扱う
最上の区画は新樽でマロラクティック発酵
バーベキューで打ち上げパーティー



3 樽の仕事
「熟成」の概念はいつ生まれたか?
船の大きさを表す国際単位はワイン樽に由来する
ぶどうを「ワイン」にして格納する
樽で育成するワインの滓引きは慎重に行う
ワイン産地ならではの中古樽マーケット
樽メーカーとワインの相性を探る
「この樽貯蔵庫、わくわくするよ!」



4 樽の個性
オーク材にもいろいろある
樽は2年使うと重くなる
樽は重要なバイプレイヤー
樽香の成分にはどんなものがあるか?
シーズニングはオーク材を洗濯するプロセス
トースティングは軽くこがす程度で
大切なのは果実香と樽香のバランス



5 ワインの貯蔵
ワインにとって亜硫酸は重要なもの
四つの顔をもつ亜硫酸
赤ワインのフェノレは「動物臭」
ブレタノミセスの増殖を防ぐ確実な貯酒管理
白ワインのフェノレは薬品的なニュアンス



6 温故知新
「時間」のフィルター
梗は徹底的に取りのぞく
最上のプレスワインを得る圧搾機とは?
発酵槽も木桶に回帰している
100年以上前からあった滓引きの方法
歴史を知ることで未来を予測する


第三章●改植編
1 土壌調査
改植は多額の費用がかかる大きな投資
メルロよりカベルネを先に改植する
まずは土壌をよく知ることから
ショネ博士の土質地図
診断をもとに土壌を改良する



2 樹の引き抜きと再植
引き抜き開始
畑から水を抜く排水路を設置する
苗植えの機械で正確に定植する



3 ブドウ品種とクローン選抜
ブドウ品種の多様性
「品種(セパージュ)」という概念
クローンとは、おなじ品種における性質の違い
優秀なクローンを選抜する
クローン全盛に対する反省



4 各品種の状況
自国のテロワールでクローン選抜を行う時代に
ピノ・ノワールの場合
ピノ・ノワールのクローンの変遷
サンジョベーゼの場合
ボルドー品種の場合
甲州の場合



5 台木について
フィロキセラ対策
台木の三大原種
交雑で生まれたいろいろな台木
カリフォルニアの油断
台木の働きは車のエンジン



6 植栽密度
昔は垣根式ではなかった
垣根栽培に移行した二つのステップ
ギヨ式とコルドン式
品種と台木は好みと勘で選んではいけない


第四章●歴史編
1 古代~ローマ時代
ボルドーの地勢
テロワールとはなにか?
ブドウ栽培に理想的な土地?
ボルドーにおけるブドウ栽培の開始
ゲルマン人の支配下、ブドウ栽培は衰退



2 イギリス王室とボルドー
ノルマンディー公、イングランド王となる
女傑アリエノールの野望
ボルドーのライバル、ポワトゥーの台頭
欠地王ジョン1世、大陸の領土の大部分を失う
フランスと決別し、ボルドーワインの名声が高まる



3 ボルドー特権
英仏百年戦争の始まり
上流のワイン産地を排除するボルドー特権
新酒はロンドンを目指した
メドックをおさえ利権を守ったボルドー
ボルドー特権はさらに300年も維持された
〈コラム〉 「ヴィンテージ」という概念



4 高級ワインの登場
甘口白ワインを求めたオランダ人
ブランデーの技術導入
可能性を秘めた新しい産地、メドックの登場
最初に有名になった「オー・ブリオン」
裕福な貴族階級に愛されたニュー・フレンチ・クラレット
イギリスとフランスの通商
1855年の格付けはパリ万博がきっかけ
ナポレオン3世はボルドー好き?
ボルドー、空前のワイン好景気を迎える
〈コラム〉 入市税
〈コラム〉 1973年の一級再格付け



5 新大陸からの病虫害
三大病虫害によりブドウ畑が壊滅
ボルドー液は「泥棒よけ」から
フィロキセラはゆっくりと広がり、最悪の被害に
対策1 アメリカ系品種を交雑する
対策2 アメリカ系ブドウを台木にする
〈コラム〉 台木への接ぎ木



6 消えたワイン産地
日本人留学生が見た産地は消滅した
赤ワイン用品種の交代
〈コラム〉 新天地を得たフィロキセラ以前のボルドー品種



7 原産地統制呼称法AOCの成立
ブドウ生産者の強い要望で誕生
評価はブラインドの官能検査で
規制だけでなくプロモーションも大切



8 「歴史編」まとめ
〈コラム〉 ワイン教育・研究の新展開 ボルドー大学


第五章●テイスティング編
1 ボルドー大学のテイスティング教育
テイスティングの起源はギリシア時代に
歴史あるテイスティング講座「DUAD」
香りの標準化合物を使うテイスティング実習



2 閾値を意識する
閾値は人によって違う
化合物ごとに自分の感度を知っておく
まぐれあたりを減らす三点識別法
審査員を審査すれば、より客観的な審査が可能になる



3 客観的なテイスティング
先入観の影響を知るためのテイスティング
醸造家のテイスティングは客観的・分析的であるべき
順番によって味わいや香りの感じ方は変わる

4 実戦的なテイスティング
難しいと感じたときのテイスティング・テクニック
白ワインのアッサンブラージュを実際に試して学ぶ
グランヴァンで成熟したタンニンを実感する
ファーストワインとセカンドラベルを決めるのは経営戦略
産地が発展するにはテイスティング教育が重要



5 公開テイスティング
新酒を先物買いする「プリムール買い」というシステム
シャトーで行われるプリムール・テイスティング
ボルドーの各AOCでは、年に一回の一般公開日を設けている
足を運んでみてわかることは多い
ソーテルヌの一級シャトーが国立の醸造学校に



6 ワインコンクール
シタデル国際ワインコンクールに審査員として参加する
審査は感覚が鋭敏な午前中に
ワインはバランスが大切



第六章●生活編
1 ボルドーの食材
美食の国フランス
ジロンド河を上ってくるアロウズという魚
ジロンド川の汽水域がもたらす美味、キャビアとヤツメウナギ
卵白はワインに、卵黄はカヌレに



2 食材ショッピング
スーパーマーケットは食材のワンダーランド
アルカション湾名産の牡蠣もボルドーの楽しみ
半期に一度のバーゲンでワインをまとめ買い



3 キノコ狩り
皆が夢中になるセップ・ド・ボルドー
ブドウ畑で見つけたムスロン



4 ビストロと家庭料理
芽吹きを見にサンテミリオンへ
ブドウ畑の中のビストロ
食事とワインのよい関係
ホームステイで経験したフランスの家庭料理
シャラント地方、美味なる休日の過ごし方



5 メドック・マラソン
赤ワインを飲みながら走る?
完走目指してワインはお預け
牡蠣、ステーキ、チーズ…補給所でコース料理



エピローグ
1 アウトソーシング 
ボルドーでは圧搾機もレンタルできる
効率よくフル稼働するレンタル機材
レンタル用の移動式ビン詰めライン
各種の分析なども外注できる
マーケティングはネゴシアンが担う



2 ワイン産地について
身の毛のよだつ急斜面
天候よりも大事なもの
日本でワインを造る理由
日本ワインの未来を切り拓く


あとがき